Get to Know Our Alumni!(2)
JFUNUニュースレター2008年11月号より
クワジオ・コフィ・イズィドーさん
クワジオ・コフィ・イズィドーさんは国連大学人材養成コースの修了生で、アフリカ西部の国コートジボワールの出身。コートジボワールでは、2002年9月に内戦が勃発。政府軍と反乱勢力の対立は泥沼化し、長期間にわたる混乱が続くことになりました。コートジボワールに、この当時ひとつしかなかった大学医学部で医学を専攻したコフィさんは、博士課程を卒業するまで、在学中の1999年から赤十字のボランティア活動に積極的に参加しました。
2003年に大学を卒業し、ただちに赤十字が派遣する医療チームの医師として、コートジボワールの西部地域に派遣されました。そこは隣国リベリアとの国境付近で最も危険な地域。もともと多くの貧しい人々が住んでいましたが、さらに、戦争により村を破壊されたコートジボワールからの国内避難民、リベリアからの避難民が溢れかえっていました。そこでは病院は破壊され、医療品や医療機器が盗まれる状況が起きていました。コフィさんはこの地に赤十字が設置した臨時の施設でマラリア、結核、赤痢、麻疹、皮膚疾患、栄養失調などに苦しむ人々の治療や戦争で怪我をした人々の医療活動に従事しました。
さらに、コフィさんは赤十字の活動の後にリベリアからの避難民のためにIOM(国際移住機関)の一員として活動。避難民の健康を守るために感染症のサーベイランスに専念しました。
この2つの経験からコフィさんが痛感したのは、紛争や災害発生時における医師の重要なつとめとして、「医療行為そのものはもちろんだが、それとともに、戦争など人的災害や自然災害に見舞われた地域では、ただちに伝染病の発生を監視し、予防策を総合的に講じることが大切である」ということ。そして、日本に留学し災害管理、感染症のサーベイランス、ヒューマンセキュリティーを学ぶことを決意しました。
国連大学で学ぶことで広がった視野
2005年に来日し、東北大学大学院医学系研究科の博士課程に入学。以来、大学とアパートを往復しながら研究に励み、「災害後の伝染病予防」をメインテーマとして、現在、博士論文の執筆に取り組んでいます。
その傍ら、東北大学医学部で学ぶ24カ国78名の外国人留学生で組織される東北大学国際医療組織(TUIMS)」の会長を務め、東北大学だけでなく、仙台市に居住する外国人の生活サポートにも取り組んできました。2005年8月に宮城県南部地震が起こったときには、直後に仙台市に居住する外国人を対象に、地震経験の少ない外国人がどのように行動したかを精密に調査。その結果を2006年2月に仙台で行われた日本集団災害医学会の学術集会で発表しました。この時、コフィさんは尊敬の念を抱く緒方貞子氏(現JICA 理事長)に初めて会い、深い感銘を受けます。
さらに、コフィさんとTUIMSのメンバーはその4ヵ月後に地元仙台市の国際交流協会、市消防局と協力して、外国人を対象とした防災訓練を企画しました。このような外国人を対象とした活動が外国人によって企画、実施されたことは宮城県では初めてのこと。そのため、地震後の調査や防災訓練の様子は地元の河北新報やNHK宮城放送局でも大きく取り上げられました。そしてこの調査では、外国人が地震などの災害発生時、ある部分において非常に弱い立場になってしまうことが明らかとなりました。
そんなコフィさんが国連大学と関わるようになったのは、2006年の国連大学グローバル・セミナー湘南セッションに参加したことがきっかけ。その後も国連大学協力会と国連大学が共催するジュニアフェローシンポジウムなど、国連大学の人材養成プログラムに積極的に参加してきました。
「大学院での専門的な研究以外に、国連大学が開催するシンポジウムやセミナーを通じて、平和や環境の問題、持続する開発や教育、ヒューマンセキュリティー、MDG'sなど、地球規模の課題を幅広く学んだことは、自分の視野を広げてくれました。そして国連大学で学んだ誰もが語るとおり、著名な教授陣との触れ合いや、さまざまな国の参加者と交流し、意見を交わしたことは、貴重な体験として今後の自分の活動にとても役立つことと思います。」
コフィさんの難民キャンプでの経験に加え、日本で得た公衆衛生や感染症サーベイランスの高い知識は、今後、災害などで緊急状態にある弱い立場の人々を支援するために、確実に役立つものになることでしょう。