国連大学国際講座-受講生の声(1)
JFUNUニュースレター2008年9月号より
大変だった授業前の準備
初めて日本に来て何より印象に残ったことは、ひとことでいえば" 質(quality)の高さ" ― アフリカ南東部の国マラウイ共和国から今回(2008年)参加したのがパトリック・ムサさん。国立マラウイ大学を2003年に卒業し学士号を取得。以後、母校でアシスタント講師 として、Word、Excel などのコンピュータアプリケーションやIT 関連の授業を担当しています。コンピュータが専門のムサさんですが、同時に国連の活動やグローバルイシューにもこれまで大きな関心を寄せてきました。
「インターネットで" UN " に関する検索を行っていたところ、United Nations University にヒットしました。それまUNU の存在については何も知らなかったのですが、UNU が実施する国際講座(International Courses)についてもその時、詳しく知ることとなったのです。」
UNU のウェブサイトに掲載されていた2008 年度のコースガイドをダウンロードし、プログラムを熟読。充実した6週間の内容に、ぜひ日本に行って受講してみたいとの希望が湧いてきたそうです。
「私の専門はコンピュータやIT 関連で、IC が今年度設定している4 つのテーマは直接的には関係のないものでした。しかし、現代においてコンピュータは、どんな問題に取り組むにせよ、必ず必要とされるものです。世界的に事態が深刻化している環境問題についても、いろいろなシミュレーションを試みたり、解決のための意志決定を行うために、コンピュータの活用が欠かせません。私が選択したコースのひとつが『環境変化に対するリスク管理』なのですが、この講座を受講することによって、私の専門であるコンピュータ技術が環境問題の解決に貢献できる可能性を見出せるのではないか、と考えました。」
「さらにコースガイドを読んでいるうちに、『グローバル化と多国間システム』にも大きく興味をそそられました。グローバル化の進展には目覚ましいものがありますが、その恩恵を大きく受けている国とそうでない国がある。グローバル化のプロセスにおける課題や国連の考え方を追究してみたいと思いました。」
「授業は、教授による講義と参加者によるディスカッションで構成されているのですが、教授の巧みなアプローチや誘導によって、熱のこもった議論が展開されています。さまざまな国籍、多様なバックグラウンドを持つ参加者がそれぞれの視点で意見を闘わせるので、とても参考になります。2 つのコースを選択しているので、多くの参考資料を事前に読んでおかなければならず、授業準備には随分と時間を費やしています。毎週ショートエッセイも課されます。授業がない時は、UNU のリーディングルームやコンピュータルーム、図書館にこもって勉強しています。」
コースを問わず受講生全員に与えられている課題が、論文提出。ムサさんは、2 つのコースそれぞれで論文を書き上げました。「『環境変化に対するリスク管理』では、Kids ISO 14000 のプログラムをどのようにマラウイでの教育現場、特に小学校・中学校において適用できるか考察を加えました。そのタイトルは"Environmental Management Education in Malawi:Exploring the Possibility of Kids ISO 14000 programme in Malawi"というものです。」
忙しい勉強の合間をぬって、用意された鎌倉観光やクルージング、朝霞基地、歌舞伎観劇などオフタイムのプログラムもエンジョイ。
「IC で受講生に配布された授業関係の資料ひとつとっても、洗練したものを感じました。勤勉な日本人の、何事においても品質に妥協しない姿勢も目の当たりにしました。マラウイはまだ発展途上の国ですが、見習いたいと思うことが多くあります。」
「異なる国々の参加者と知り合えたことは何よりも幸せなことでした。今後も互いに連絡を取りUNU Alumniにもぜひ参加して、情報交換を続けていきたいと思っています。」
今回のIC 受講の経験を生かしながら、母国で大学院進学を目指したいというのが、ムサさんの今後の希望です。
IC受講生の声
パトリック・ムサさん家喜志真さん
ICのカリキュラム等
学習環境UNU本部内の図書館を自由に利用できるほか、期間中、受講生には専用のリーディングルームとコンピュータルームが自習場所として用意される。
成績評価 1)Weekly reflections:毎週、その週の講義内容やディスカッションを元に500words でショートエッセイを提出する。2)Class performance:文献課題を授業までに読了したうえで、授業ではディスカッション、ディベートやグループワークへの積極的な参加が求められる。3)Attendance:授業へは特別の事情を除いてすべて出席することが求められる。欠席した場合、最終評価が減じられる。4)Final Paper:上記に加え、受講生は2,500-3,000wordsで与えられたテーマから一つを選んで最終論文を提出する。以上を考慮して、受講生にA-F の成績評価が与えられる。各要素の評価割合はコースによって異なる。
ファイナルプレゼンテーション最終日には、各コースでそれぞれで選ばれたグループが、受講生、講師、招待者等臨席の中、研究成果を発表する"Final Presentation" が催される。
修了証課題、授業への参加度や出席状況で所定の基準をクリアした受講生には、修了証が与えられる。
2008年度の受講生データ■受講生数:37カ国57名■地域別割合:アジア・太平洋22.4%、ヨーロッパ8.1%、北・南アメリカ21%、アフリカ15.3%■男女別:女性19名、男性38名■コース別受講生数:「新たなる地球規模の課題とガバナンス」25名、「環境変化に対するリスク管理」23名、「グローバル化と多国間システム」26名、「国際貿易と開発」24名、1 コースのみの受講生-16名、2コース受講生-41名
受講生の主な職業学生、大使館員、大学教員、国連職員、NGO 職員、弁護士、研究所研究員など多士済々。