教えることによって学ぶことも多い

ベセリン・ポポフスキー国連大学学術研究官インタビュー - JFUNUニュースレター2011年11月号より

国連大学協力会(jfUNU)では、毎年夏の10日間、早稲田大学からインターン学生を受け入れています。 これは、早稲田大学キャリアセンターが、同大学生のキャリア形成支援を目的として実施しているインターンシッププログラムを通じて行われるもの。jfUNUでは2007年より同センターと提携し、「国際協力コース」における受入れ機関となっています。 今年は、8月26日から9月12日まで、同大の石川哲生君(早稲田大学教育学部3年生)が本法人で就業体験を持ちましたが、その一環として石川君が、国連大学シニア・アカデミック・プログラムオフィサーであるベセリン・ポポフスキーさんにインタビュー。大学院運営や学生指導の中心的立場にあります。

教えることによって学ぶことも多い

――これまでの経歴を教えてください。

ポポフスキー:私の最初のキャリアは、ブルガリアの外交官としてスタートし、1988年から1996年まで、いろいろな場所に赴任しました。当時の世界情勢は、イラクで湾岸戦争が発生する一方、ユーゴでは深刻な内戦などが起こったりして、そうした地域の混乱の場面に遭遇・直面しました。その過程で私は、外交官として国連安保理の決定をいろいろと分析しているうちに、安全保障や人権の問題について、洞察を深めるようになりました。  その後外交官を辞め、NATOの研究員を勤めるかたわら、論文を書いてPh.Dを取得し、研究者となり、イギリスのエクセター大学で人権や安全保障について教えました。この時期、多くの著作も出版しています。

――国連大学に来られたのは

ポポフスキー:エクセターに続くキャリアとして国連大学を選んだのは、外交官として経験してきたことと学問で追究してきた経験とを統合してみたいと考えたからです。当時の私には国連大学は、そういう試みを実行する場としてちょうどぴったりのように見受けられました。実際入職してみて、理想的な環境であることを実感しています。

――日本と祖国ブルガリアをどのように比較されますか?

ポポフスキー:日本滞在も長くなりましたが、全般的に日本の方がブルガリアよりも生活しやすいことは明らかです。ブルガリアも10年前と比較すれば、状況は良くなっていますが、未だにヨーロッパにおいては最貧国のひとつに属し、人々の生活水準も低い。課題を大きく抱えているといっていいでしょう。人権の面では、ロシアより状況は良好ですが、他のヨーロッパ諸国ほどではない。  しかし、ブルガリア人というのはとても素直で、列車に乗り合わせれば、つい隣の人とおしゃべりしたり、ものをシェアするような人懐っこい国民性があります。日本人とは逆ですね。私も日本に長くいて、少しシャイになったかな。 日本ではブルガリアというと、最も有名なのは相撲の「琴欧州」、その次が「ヨーグルト」。まだまだ知名度が低いですね。

――研究テーマについて教えてください。

ポポフスキー:国連大学では、従来「開発と環境」と「人権と安全保障」の2つの大きな分野で研究を行ってきましたが、ISPではそれらを「サステイナビリティ」という統一テーマのもとに、「地球変動」「国際平和と安全保障」「国際協力と開発」という新たに3つのカテゴリーに再編し、これらを軸にグローバルな課題の解決を目指します。おのずと自分の研究分野もシフトすることとなりました。人権や安全保障の問題を災害や地球環境の変化、あるいは人為的な作用とからめて考えています。ISPでは、こうしたマルチアプローチな形で地球規模課題の研究を行います。他の大学院の教育体制では見ることができないと思います。個別の問題だけを追究したいのであれば、日本の他の大学院に進む方がいいでしょう。

――UNUの大学院生たちをどのようにご覧になりますか?

ポポフスキー:素晴らしい学生ばかりです。少人数の対面方式で教えることによって、学生から積極的な質問を受けるチャンスが生まれ、こちら側でも新たな発見が生まれます。教えることによって、学ぶことも多い。私自身の研究生活にも役立っています。  学生たちは皆とても真面目で、真剣にリサーチに取り組んでいます。彼らが将来手にするのは、UNUの学位と修了証明書ですが、就職に際しては、彼らの能力が幅広く認められることでしょう。  今現在、日本の学生たちに知名度が低いようですが、まだ始まったばかり。国連大学グローバル・セミナー湘南の学生にも90名以上の学生が参加していますから、彼らを通じて日本人の間でも国連大学大学院のことが知られていくようになると思います。

――大学院生へのアドバイスはありますか?

ポポフスキー:大学院の勉強は、最終的にはひとつのトピックに絞るので、自分のプランをしっかりと固めなければなりません。頭の中で常に問いかけをし、その答えが見つからない場合、大学院に入って回答を探し出すのです。そしてUNUはその手助けをしてくれるところです。

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