アフリカ内の国々同士で協力し合えるようなリーダーが必要

今年の夏期期間中、早稲田大学キャリアセンターからの派遣により、国連大学協力会でインターンシップを行ったのが同大基幹理工学部2年生の石原みやびさん。研修の一環として国連大学サステイナビリティと平和研究科に在学するケニア出身のアレキサンダー・インボさんにインタビューしてもらいました。

JFUNUニュースレター 2012年11月号より

―― これまでの経歴を教えてください

インボ:私はケニアのケニヤッタ大学で社会科学を勉強しました。卒業後、ケニア・コマーシャルバンクに1年間勤務し、会計とカスタマーサービスを経験しました。その後、ケニアワイルドサービスに勤務し、コミュニティマネージャーとして野生生物保護への地域参加を促す活動をしました。

―― 国連大学に入学されたきっかけは

インボ:より水準の高い教育を受けたいと思っており、インターネットで情報収集をしていました。そこで、国連大学の存在を知り、サステイナビリティと平和研究科の研究内容に興味を持ちました。

―― 研究内容について教えてください

インボ:サステイナビリティと平和研究科には「地球変動とサステイナビリティ」「国際平和と安全保障」「国際協力と開発」という3つのテーマがあるのですが、私は「地球変動とサステイナビリティ」で土地利用に関する研究活動を行っています。論文テーマは「持続可能な開発のための農地改革」です。農地制度の改革や公平な土地利用分布の方法を研究しています。来年は、1ヶ月ほどケニアでフィールドワークをする予定です。そこで行う現地の人々へのインタビューや政府資料の内容を論文に盛り込もうと考えています。

―― 大学院の講義はどうですか

インボ:国連大学の講義内容は非常に実用性に長けているように感じています。講義は学生12人と少人数です。教授もフレンドリーに接してくれます。出題されるエッセイやリサーチペーパーの課題をこなすのは大変ですが、金曜日にはクラスメイトと外で遊ぶこともあります。9月からは、International Cooperation and Development とUN Systemの2科目を履修する予定です。

―― ケニアと日本をどのように比較されますか

インボ:日本は、伝統文化と現代文化がうまく共存している国だなと思います。やはり、ケニアに比べると、貧困や犯罪は少ないですし、交通や水の供給に関する問題もほとんどないですよね。けれど、国民の政治に対する意識はケニアに比べて低いと感じています。ケニアでは国の代表が決まるとき、必ずといってよいほど暴動が起きるのです。しかし日本では誰が国の代表になるのかについて、国民は関係ないと思っているように見えます。
また東京は物価がやはり高いですね。私はパナソニック株式会社から奨学金をもらっているので、生活費はそれでまかなっています。勉強に専念できるのでとても恵まれています。この奨学金がなければ、日本に来ることはできなかったでしょう。パナソニックが日本で有数の大企業であることも知っていますよ。

―― 野生生物保護に興味を持ったきっかけは

インボ:ケニヤッタ大学在学中、NGOで行った9ヶ月のインターンシップ経験で、野生生物保護の重要性を知りました。

―― 野生動物と人間の間にある困難は何でしょうか

インボ:主に3つあります。まず1つは、野生動物が人間の生活に害を与えるケースが増えているということです。例えば、農家の作物を食べてしまう象は近年問題となっています。これに関しては、被害を受けた人に対する政府からの経済的な賠償が給付されるような法律を作る必要があります。2つ目は、営利を目的とした密猟です。売買用の角や牙を獲得するために、サイや象が殺されています。3つ目の問題は、干ばつによる野生動物の激減です。また、人口増加に伴い、野生生物の生息領域に人間が侵入してしまうケースが多くなったことも近年の問題として浮かび上がっています。

―― これらの困難に対する対策や今後の目標は何でしょうか

インボ:野生生物の生息領域の多くは個人が所有する土地にあるので、野生生物と人間の共存を目指すには、NGOや土地を所有する農場主を巻き込んだ全面的な地域参加が必要です。私が働いていたケニアワイルドライフサービスでは地域参加を実現するために、1)自然保護の重要性を人々に教育する、2)自然保護に協力することで経済的な報酬が得られるようなシステムを構築することの2点を目指しています。自然保護の教育については、子供たち向けの講演会を学校で開いています。2点目に関しては、観光業による利益を自然保護の協力者に分配することを行っています。この利益を使って、給水システムの向上や病院などの施設を設置することができるのです。観光業による利益は農業利益の次に大きいので、観光業による利益を政府から人々に分け与えることができるかが地域参加のポイントとなっています。人と動物が共存するには、害獣防除方法を効率化させる必要もあります。トラップによる獲得、電気柵、被害にあったときに連絡を取るための電話設置などが実地されています。また、ケニアの土地分配は、少人数が国の半分近くの土地を独占してしまっているのが現状です。このような土地分配を改善するため、私は法律改正の提案をケニア政府にしようと試みています。

―― アフリカの国々が経済的に自立するには何が必要だとお考えですか

インボ:農業利益に依存し続けることはできないと考えています。現状は、アフリカの国々でとれた天然資源を先進国が製品化し、元の価格の何倍かになった製品をアフリカの国々に売りつける、といった先進国が得をするようなシステムになっています。例えば、コーヒー豆はアフリカの国々で取れますが、豆の加工作業は他国にまかせています。加工されたコーヒー豆をアフリカの国々が他国から買い取る形になり、最終的にはアフリカの国々にとっての損失に終わるのです。この状況を打破するには、アフリカの国々は自らの土地で得た天然資源を使い、自分たちで製品を作り上げ、それを他国に輸出する、といった一連の作業を行う必要があります。これを実現させるには、有能なリーダーが必要です。現在の国際貿易の不公平な点を理解し、アフリカ内の国々と協力し合えるようなリーダーが必要です。

―― 今後の展望について教えてください

インボ:大学院を卒業したら、ケニアに戻り、ケニアワイルドライフサービスで2年ほど働こうと思います。職務経験を得てから、博士号取得を目指したいと考えています。最終的には、政策立案者として、ケニアの政府機関で自然保護の政策を改善していきたいと考えています。

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